日光男体山中腹からの草津白根山。 手前左は戦場ヶ原。
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newsletter108[pdf]
【お知らせ】
特別シンポジウム 開催報告
「ジオパークを考える -地方創成という視点から-」
当機構は,日本におけるジオパーク活動に深く関わり,日本ジオパークネットワークの創設に関わりました。 昨年,ジオパークはユネスコの正式事業となり新しい局面を迎えています。 こうしたことから,当機構としてジオパークの活動に今後どう関わっていくのか,を議論することを目的として,以下のシンポジウムを開催いたしました。
 パネルディスカッションでは,コーディネーターとパネリストのやりとりだけではなく,会場から積極的な発言があって議論が進み,大変有意義なシンポジウムでした。
<開催概要>
 主  催:特定非営利活動法人 地質情報整備活用機構
 協  力:地質リスク学会,一般社団法人 全国地質調査業協会連合会
 開 催 日:平成28年11月18日(金) 13時30分 ~ 17時00分
 開催場所:飯田橋レインボービル 2F「2A会議室」
 参 加 費:無 料
<プログラム>
 13:30 開場
 14:00~14:10 開会挨拶 大島 洋志 (当機構 会長)
 14:10~14:50 基調講演 「日本におけるジオパークの今後の活動について」  斉藤 清一 氏 (NPO)日本ジオパークネットワーク 事務局長
 14:50~15:00 休憩
 15:00~17:00 意見交換
     ・コーディネーター: 永野 正展 氏 (高知工科大学 特任教授 / 当機構 監事)
     ・パネリスト:     長谷 義隆 氏 (天草市立御所浦白亜紀資料館 館長)
                  柚洞(ゆほら) 一央 氏 (学校法人 徳山大学 経済学部 准教授)
                  成田 賢 氏 (一社)全国地質調査業協会連合会 会長)
<配付資料>
 ① 日本におけるジオパークの今後の活動について                   斉藤 清一 氏
 ② ジオパークを考える -地方創成という視点から-                  永野 正展 氏
 ③ ジオパークの活動に民間の力を取り組むには? -天草ジオパークの試み- 長谷 義隆 氏
 ④ ジオパーク活動の現場から -理想と現実の狭間で-               柚洞 一央 氏
 ⑤ 地質調査業の立場から見たジオパークと地方創生                  成田 賢 氏
<開催状況>

基調講演 斉藤 清一 氏

パネルディスカッション。 左より,柚洞氏,長谷氏,永野氏,成田氏。
各氏のご講演や質疑の要旨を以下に略記します。
 ① 基調講演後の質疑において,糸魚川市のように自治体からの助成金が豊富な場合はジオパーク活動もやりやすいのでは・・・という内容の質問に対して斉藤氏からは,「首長の理解があって助成金が貰える間は良いが,首長が変わっていきなり助成金が打ち切られるという可能性もあるので,それに頼るのは危険である。」という発言がありました。
 ② パネルディスカッションのコーディネーターの永野氏からは,「地方創生関係交付金の運営の実態を踏まえて,ジオパーク活動における助成金制度の活用について今後考えていく必要がある」という趣旨の発言,「GUPIはNPOとしてJGN(日本ジオパークネットワーク)とJGC(日本ジオパーク委員会)の活動と今後どのような関係を築いて行けるのかを検討する必要がある」という趣旨の発言がありました。
 ③ 同じくパネリストの長谷氏からは,「現在の行政枠内ではジオパークとしての目標を達成するには速度感,充実感に懸念されるものがあるので,個人で一般社団法人の立ち上げを計画して7月に認可されました。」という趣旨の発言がありました。
 ④ 室戸ジオパーク推進協議会の専門員であった柚洞氏からは,「室戸ジオパーク推進協議会を民間主導型にするために,一般社団の法人格取得を目指して活動しましたが,かなり大変でした。」といった趣旨の発言がありました。
 ⑤ 同じくパネリストの成田氏からは,「全地連は,これからもジオパーク活動を強く支持協力して行きます。」という趣旨の発言がありました。

 ※ 本シンポジウムに関する案内書,配付資料(予稿集),大島会長挨拶文,開催状況写真を以下のウェブページで公開しております。
    ダウンロードはご自由です。 http://www.gupi.jp/Book.html
【事務局報告】
三次元地盤モデルの推定(作成)を支援するウェブサイト(続報)
 (一社)全地連は,この程標記サイトを開設しましたが,当機構はウエブサイトを開設する作業に加え,関連する様々な処理プログラムの開発を担当しました。
 本サイトの開発コンセプトは,「地質技術者が三次元地盤モデルを初めて作成する際の入門用の処理システム」となっており,標記サイトに掲載されているプログラムや機能は,「全て自由に利用」することができます。
 本報告では,Newsletter No.107の発行時点では未完成であった「(7)三次元地盤モデルピューアプログラム(マニュアル含)」の配付(公開)について略記します。
<ビューアの特徴>
 ★ボーリングモデル(イメージ),テクスチャモデル・地層境界面データ,準三次元断面図・パネルダイアグラムを,三次元的に表示するビューアプログラムです。
 ★公開分については,フリーライセンスなので,カスタマイズが可能です。
 ★サンプルデータ(パネルダイアグラム1)付きなので,自分が用意する地盤モデルの三次元表示ができます。
 ★動作にはWebサーバが必要です。但し,現時点では,Mozilla Firefox を使用する限り,クライアントパソコン内で作動することが確認済みです(インターネットへの接続が条件)。
 ☆ただし,開発したサーフェスモデラーの出力である「3D-DXF形式」は表示できません。
<配布プログラム・データ>
 ★本プログラムは,「cim3d_WebGL.zip」という圧縮形式で配付します。 解凍すると下図のファイルとフォルダが出現します。

三次元地盤モデルビューアを構成するファイルとフォルダ
 ・「index.html」は,起動用のHTML Documentであって,ファイル名の変更が可能です。
 ・「DEFINITIONS.js」は,パラメータを格納したJavaScriptファイルであって,三次元表示させるコンテンツに対応して,登録するデータを変更する必要があります。
 ・「DATA/」は,三次元表示させるコンテンツの全データを格納するフォルダです。「DATA/」の中には,以下にアクセスして表示される,全てのコンテンツを格納してあります。
  https://geonews.zenchiren.or.jp/cim3d/cim3d_demo/3DModel/PanelSample01_3d.html

「cim3d_WebGL.zip」で提供されるデータの三次元表示例
地表面,地層境界面,パネルダイアグラム,ボーリングモデルを一括して3D表示可能。
360゜回転させること,前後左右に移動させることが可能。

交差する地層境界面をそのまま表示します(地層の論理モデルを考慮しない)。
(左)凸状地層の表示例。    (右)凹状地層の表示例。

(左)ダムサイトの地質平面図。     (右)河川堤防の地質縦横断図+ボーリング。
 プログラムと使用説明書のダウンロードは,以下にアクセスしてください。
 https://geonews.zenchiren.or.jp/cim3d/geomodeller/index.html
【おしらせ】
日本の奇岩百景の選定・応募状況(中間)
特別シンポジウム「ジオパークを考える -地方創成という視点から-」で基調講演をされたJGN事務局長の斉藤氏に対し,JGNの正会員(認定ジオパーク)と準会員(構想ジオパーク)に対して,それぞれのジオサイトにある「これは!」という奇岩を「日本の奇岩百景」へ応募して頂くよう働きかけをお願いしました。
 その結果,現時点で以下の奇岩の応募がありました。 現在,選定・編集委員会で審議しておりますので,年内には決定されるものと考えています。
  ① 北 海 道:十勝岳(山麓)ジオパーク構想区域内:2奇岩
  ② 和歌山県:南紀熊野ジオパーク区域内:1奇岩(既に2奇岩が登録済み)
  ③ 熊 本 県:阿蘇ユネスコジオパーク区域内:2奇岩

 当機構正会員,賛助会員におかれましては,「これは!」という奇岩をお知らせ下さい。
 応募規定を簡略化しており,奇岩名称と読み方(ふりがな),住所,主な謂われやエピソードなどと写真1枚以上に加え,応募者の情報(住所,氏名,メールアドレス)があれば結構です。
 以下にアクセスをお願いします。
  http://www.web-gis.jp/kigan100.html
【書籍紹介】
トンネル技術者のための地相学入門
 以下は,「刊行にあたって」中の一文です。
 「本書の発刊は,地形中心のこれほどまとまったトンネル技術書が無いこと,雑誌よりも使いやすい書籍の形で残すことが良いこと,そのための労苦は厭わないとの声が委員会*のメンバーから出てきたことによる。本書をご覧になれば,地相(地形)を読み,山の性状(地質)を想像してみるという『隧道十訓』の教えの中の「地相は人相 山の性状」に少しは興味を持って頂けるはずと考える。ぜひ,多くのトンネル技術者の必読の書として愛読されて欲しいものである。 ・・・・ 」
                 執筆 大島 洋志氏(現 当機構 会長)。

* 委員会:月刊誌『トンネルと地下』編集委員会

 監 修 者 大島 洋志
 編 集 者 木谷日出男
 顧  問 鈴木 隆介
 執 筆 者 居相 好信,泉谷 泰志,一條 勝,稲葉 武史,
       岩永 茂治,上野 奨司,他18名
 発 行 所 (株)土木工学社 http://www.tunnel.ne.jp/
 図書番号 ISBN978-4-88624-089-7
 定  価 \3,200円+税
2016年11月8日の早朝,福岡駅前で発生した大規模陥没事故とその後の沈下現象に接し,標記図書を紐解いていたら,以下のような事例に関する記述を見つけました。
 事例2:圏央道・笠森トンネル【土取り場跡地の盛土地帯で発生した切羽崩壊と地表面陥没】,同書,pp154-155.
 地下水位の高い砂層直下の岩盤を掘削していたこと,トンネル天盤上の岩盤が薄かったことなど,両者の事故には共通点があるのでは,と思いました。
本書に記されていたことが「地質リスク」として土木特にトンネル技術者に周知されていたら,と思うのは編者だけでしょうか(Newsletter編者)。
【書籍紹介】
地質職人たちのアーカイブス
以下は,「序にかえて」中の一文です。
 「この実務家としての地質技術者の現状はこれまでに一般の人々に伝えられることも少なく,ひいては一般市民の地質学を含む地球科学への興味を失する結果となっているとも考えられる。このため,ここに著者たちのこれまでのささやかな体験や想いを書き残すことで地質職人たちへの理解の助けにして貰うと同時に,ジオロジーの多様性と面白さをも伝えられたらとの思いで本書をとりまとめた。・・・・」
                  執筆 中尾 健児氏(当機構 元理事)

 編  者 六連星の会
 執 筆 者 中尾 健児,奥園 誠之,古部 浩,
       桑原 啓三,若佐 秀雄,今村 遼平
 発 行 所 (株)郁朋社 http://www.ikuhousha.com/
 図書番号 ISBN978-4-87302-630-5 C0051
 定  価 \1,500円+税
 2014年8月,広島市安佐南区で発生した土石流災害に関して,本書ではp.178の「第一節 繰り返される土石流災害」の中で,「そういう小型の扇状地性の地形をしたところ(編者注 沖積錐)は過去の土石流の流出・氾濫・堆積によってできたところで,今後も同じ場所に同様の災害が起こり得ることを示している。だから・・・」という記載がありました。
 同災害が発生した直後,GUPIでは沖積錐の存在による危険性について,以下の解説記事を地質情報ポータルサイト上に掲載しましたが,同じ考えをもつ地質職人はいるのだなぁ,という感慨を新にしました(Newsletter編者)。
 http://www.web-gis.jp/GS_Topics/201408Hiroshima/index.htm
【事務局報告】
地質情報ポータルサイト「沖縄県のガマと地下壕」に南部戦跡を追加
 標記の解説ページは,右図の例のようにGoogle検索で常に上位を占めるほど,読者の多い情報発信サイトです。
 これは,沖縄を訪れる修学旅行生の殆どが「平和学習(教育)」のために南部などの戦跡を巡る際に,事前に行う資料収集のためと思われます。
 従来は,編集者(中田)の業務経験から那覇市を中心とした地下壕の情報発信が大部分でしたが,同市での対策工事が進行した結果,教育に利用できる地下壕(ガマやアブ)が少なくなりました。
 総会と理事会での承認もあって,この程,南部戦跡の地下壕(ガマやアブ)のうち26箇所の現地調査を行って,当該ページを拡充しました。

URL:http://www.web-gis.jp/gama.html
その結果,当該ページで紹介する地下壕は,以下の通り合計91壕となりました。
  行政域   壕数  代表的な壕の名称                   
  那覇市    61  県庁壕,第32群首里壕,識名の壕,城岳公園壕,など
  糸満市    21  白梅之塔下壕,轟の壕,アンディラガマ,マヤーアブ,など
  南風原町   3   陸軍病院壕(No.20),ナゲーラ壕,など
  豊見城市   2   海軍司令部壕,など
  南城市     2   糸数アブチラガマ,前川ガンガラー
  八重瀬町   2   クラシンジョウの壕,ヌヌマチガマ
   合 計   91
 戦後71年を経過し,南部戦跡でも小さなガマ(ほぼ鍾乳洞の意味)やアブ(同ドリーネの意味)は工業団地の整地などのため,次々と埋められているのが現状です。
 体験学習として壕の中に高校生を入れている壕の殆どは,琉球石灰岩の鍾乳洞やドリーネです。 琉球石灰岩は硬い岩石なので,よもや崩壊することは無いとは思いますが,どこに危険性が潜んでいるかわかりません。 多くは民地にあるので,もし崩落が発生して入壕中の高校生が死傷した場合,その責任は所有者が負うのか,地元の自治体が負うのか,引率の学校が負うのか編者はわかりません。
 しかし,無給(低給)と思われるガイドにだけは責任を押しつけないで欲しい,と思います。 これは,ジオパークでも同じではないでしょうか。

(左)壕の入口。 湧水があるのでポンプアップされています。
(右)平和教育で入壕中の神奈川県から来た高校生。 糸満では,ヘルメットの着用は無しでした。
糸満市 轟の壕にて(http://www.web-gis.jp/GS_Okinawa-Gama/Itoman-06.html)

ガイドと高校生が持つ懐中電灯が光っています。外では看護師が待機中でした。
糸満市 アンディラガマにて(http://www.web-gis.jp/GS_Okinawa-Gama/Itoman-09.html)
【編集後記】
★今年も早いもので12月になってしまいました。 実に自然災害の多い年でしたが,皆様いかがお過ごしでしょうか。
★先日のニュージーランド地震では,深層崩壊によると思われる大きな天然ダムができました。 2011年8月,台風12号による豪雨により,五條市や十津川村で発生した深層崩壊と天然ダムを思い出しました。 地震と大雨という原因は異なっていても,深層崩壊と天然ダム(の決壊の恐れ)という,人的災害に直結する部分は同じである,と思った次第です。

ニュージーランド,南島。(-42.41653, 173.26311)
https://twitter.com/RichardWoodsNZ