筆者(中田)は,全国地質調査業協会連合会が編集する『地質と調査』2017年第4号に,基礎技術講座として「三次元仮想空間映像による三次元地盤モデルの表現」という一文を執筆しました(現在,校正・編集中)。この中で紹介している全てのコンテンツは,以下のウェブサイトで一般に公開しています。
https://www.web-gis.jp/3D_GeoModel_Demo/index.html
以下に,公開中のコンテンツの中から代表例を紹介いたします。なお,同書は全地連のホームページで一般に公開されます。 |
|
【1】円筒モデルの例その1[一次元地盤モデル]]
・円筒の内側にテクスチャ(パネルダイアグラム)を貼ったモデルです。実際には16角柱のモデルとなっており,パネルダイアグラムも16角柱の外周に沿った座標で作成しました。
・VRゴーグルなどを着けて地中を覗く,という疑似体験を想定して作成したモデルです。
・VRMLとWegGLという二つの異なった映像化手法で公開しています。各手法については,公開サイトで解説しています。 |
図-7 円筒モデルの例その1[クリックで拡大] |
【2】円筒モデルの例その2[一次元地盤モデル]
・円筒の内側に,360度展開写真(パノラマ)を貼ったモデルですが,実際には,「円筒モデルその1」と同じく16角柱を使用しています(直径や高さなどは異なります)。
・一見してパノラマ写真と変わらないようですが,図-8(右下)のように,近接写真にありがちなゆがみがかなり低減されていることがわかります。
・VRゴーグルなどを使用した疑似地下空洞体験などの利用を想定しています。 |
写真提供:川崎地質(株)
図-8 円筒モデルの例その2 [クリックで拡大] |
|
【3】テクスチャモデルの例[準三次元地盤モデル]
・地表面のワイヤーフレームモデルに,地形図や様々な平面図を貼り付けたモデルです。
・平面図は,土砂災害警戒区域図(急傾斜地,土石流),地すべり地形分布図,浸水想定区域図など様々なものが利用できますが,1度イメージ(jpgやpng)として保存する必要があります。
・ワイヤーフレームの作成に使用する標高データは,『CIMに対応するための地盤情報共有基盤』>「三次元地盤モデル作成支援サイト」>「(3)標高データの取得」で作成すると便利です。
[クリックで拡大]⇒ |
図-9 テクスチャモデルの例(鎌倉市中心部の急傾斜地) |
【4】境界面モデルの例[三次元地盤モデル]
・「境界面モデル」とは三次元地盤(地質)モデルの教本で「サーフェスモデル」と記載されているものを言い換えただけです。CGの世界で言うサーフェスと,情報地質系で言うサーフェスでは,その意味が微妙に異なっているため,CGやVRの世界に合わせました。
・図-10は,全体が8層構造ですが,半透明の地表面と最下層の2面のみ表示してあります。境界面モデルを俯瞰する場合,境界面が重なるため下の境界面が見えないという最大の欠点があるため,表現方法に最も苦労するモデルと言えます。 |
図- 10 境界面モデルの例[クリックで拡大] |
【5】疑似ソリッドモデルの例[三次元地盤モデル]
・図-11のように,モデルの地表面をテクスチャモデルで表し,地質構造体の周囲をパネルダイアグラムで表したモデルです。
・地質構造体の中は空洞なので見ることはできませんが,地質断面図を見慣れた目には最も理解しやすい表現方法のような気がします。
・パラパラ漫画のように,切断面を自由に動かすことにより,地質の構造をより理解し易くなるでしょう。
地質構造体を消去した手前の部分にも,
ボーリングモデルを表示しました。 ⇒ |
図-11 疑似ソリッドモデルの例[クリックで拡大] |
【6】杭基礎をイメージした複合モデルの例[三次元地盤モデル]
・図-12は,建築の杭基礎と地質構造を表現してみた比較例です。
・図-12(上)は,溺れ谷の底に軟弱地盤が堆積し(境界モデル),杭に見立てた円柱を打ち込んだと言うイメージです。上図の手前部分は,軟弱層を貫通して支持層まで打ち込んでありますが,この図からはよくわかりません(垂直に回転させて底の部分を見ると,支持層まで届いていることがわかりますが)。
・図-12(下)は,杭の部分にパネルダイアグラムを併記した結果です。パネルダイアグラムでは支持層直上の軟弱層の存在が描かれているため,杭の先端が支持層まで届いていない様子がよくわかります。
・このように,境界モデルと他のモデルを組み合わせることにより,より理解しやすい三次元モデルを作成することができると考えています。 |
図-12 複合モデルの例(杭基礎をイメージ)[クリックで拡大] |
【7】マイクロゾーニングをイメージしたパネルダイアグラムの例
[三次元地盤モデル]
・図-13は,地震時の揺れの大きさを推定するマイクロゾーニングをイメージしたパネルダイアグラム群です。
・各パネルの交点が,前述した鉛直一次元柱状体モデルを作成する場所である,と考えてください。
・このモデルだけ縦横比を圧縮してあります。手前のパネルが衝立となって向こうが見えなくなるのを少しでも防ぐためです。 |
図- 13 パネルダイアグラムの例[クリックで拡大] |