【紹 介】 |
カシミール3D スーパー地形セット |
地形図や地形断面図,更には地形鳥瞰図などを自由に描画することのできるフリーソフトとして,永らく使用されてきたカシミール3D(KASHMIR 3D)に,この程国土地理院の基盤地図情報をベースにした5mメッシュの高密度地形データが使用できるようになりました。
「スーパー地形セット」と言うこのプラグインは,一年間の有料ライセンス制(\1,980/年)ですが,以下のような機能が付与されています(作者のウェブページより)。
・日本全国をカバーする5mDEMデータが使用可能(未整備なところは10mDEMデータを補間)
・5mDEMと国土地理院の地図と空中写真を組み合わせて使用可能
・5mDEMの地形表現上に,ユーザーの地図や写真をオーバーレイ可能
編集者が試用した結果を以下に例示します。 |
(1)地形表現例
(左2葉)10mDEMによる従来の地形表現。(上)沼田市郊外。(下)勝沼町
(右2葉) 5mDEMによる新しい地形表現。(上)沼田市郊外。(下)勝沼町
5mDEMを利用した「陰影図」によって,地形変化をより細かく読み取ることができるようになる,という例です。
また,標高段彩図(色別標高図)の色使いや陰影の付け方(太陽の方向など)を丁寧に行うことにより,沖積錐(扇状地)などを明瞭に表すことができるようになり,更に,傾斜量図などもより詳細な地形変化を捉えるようになると考えられます。 [図をクリックすると拡大します] |
(2)3D表現例その1
下図に示す2例は,「カシバード」という3Dビューア機能を使って作成した陰影図です。
下図の上2葉は,鳥海山の火山砕屑流の部分ですが,崩壊した火砕流の跡がきれいに表現されていることがわかります。 また,下図(上の右)には自動車道路(鳥海ブルーライン)すら表現されています。
下図の下2葉は,横浜市西区の急傾斜地に造成された住宅街です。 標高/水平距離=2で描画しましたが,ものすごいところに住宅が建っているなぁ,というのが率直な感想です。 [図をクリックすると拡大します]
(左2葉)10mDEMによる従来の地形表現。 (上)鳥海山北部斜面。 (下)横浜市西区
(右2葉) 5mDEMによる新しい地形表現。 (上)鳥海山北部斜面。 (下)横浜市西区 |
(3)3D表現例その2
下図は,10DEMと5mDEMデータに工学的地質平面図をテクスチャとして貼り付けた結果です。
カシミール3Dでは,ユーザーが独自に用意した地図や空中写真を利用することができますが,5mDEMにも対応していることがわかりました。
ダム建設などの事業計画を議会や住民に説明する際に,有効な手段になると考えられます。 [図をクリックすると拡大します]
某ダムサイト地質図。 (左)10mDEMによる従来の3D表現。(右) 5mDEMによる新しい3D表現。 |
(4)5mDEMのメリット
国土地理院では,10mDEMデータと5mDEMデータの違いは以下のように説明しています。
・10mDEM:1/25,000地形図の等高線データ等を基に作成した基盤地図情報(数値標高モデル)
・5mDEM :地表を5m間隔で区切った方眼(メッシュ)中心点の標高を、航空レーザ測量によって取得したデータをもとに、家屋や橋、樹木等を取り除き作成したより詳細な地表面データ
すなわち,10mDEMデータは等高線から読み取って補間したデータ,5mDEMは直接測定したデータと言うことになります。
以下の図は,鹿児島県南部の海岸線を比較したものですが,10mDEMの海岸線に出現している「階段状地形(10mDEMによる誤差)」が明らかに改善されていることがわかります。
また,人家のある所は「高取」と記された田の部分より一段高い所にあることや「武道館」の左を流れる小河川は意外と急な河岸を持っている,というようなこともわかります。
1/25,000地形図だけから地形の特徴を見極める,という地形判読技術は過去の遺産になりつつあるような気がしますが,いかがでしょうか?。
(左)10mDEMによる従来の表現。 (右) 5mDEMによる新しい表現。 [図をクリックすると拡大します] |